Never Stop My Curiosity

知的好奇心の赴くままに。

服薬中止後に何年にも渡って体内に残る薬

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ブロックバスター候補Anacetrapib

 

AnacetrapibはMerckが現在Phase3で臨床試験中のCETP ihibitorというカテゴリーに属する薬である。

善玉コレステロールであるHDLコレステロール濃度を上げ、悪玉コレステロールと言われるLDLコレステロールを減らす、究極の薬になる可能性を秘めている新薬候補品と言われる。

コレステロール濃度がコントロールされないと結局は脳卒中とか、心疾患とかぽっくりと死んでしまう、いわゆる心血管イベントを起こしやすくなる。

これを防ごうという薬だ。

仮説通りいけば、売上年間何千億円みたいな新薬(ブロックバスター)になる可能性を秘めている。

このAnacetrapibの臨床試験に参加した患者からびっくりすることがわかった

 

この論文では、Anacetrapibの服薬終了12週間後においても定常状態の谷間の血中濃度(Ctrough)の40%近い血中濃度が見つかり、2.5-4年後でも少しは血中で検出されるというお話。
この手の生活習慣病関連の薬は何とか血中に薬を長く入れようと、普通は1日1回で間に合う薬を作ります。もちろん、2-3日たてば血中からなくなってしまうのが普通で、数日はもとより数年!単位で血中に残る薬なんて、作りたくっても普通はできません。

Anacetrapibの消失の遅さの原因は脂肪組織に取り込まれやすいこと、そして臨床試験初期に発見できなかったということで、服薬期間にも依存するようです。
もしAnacetrapibが安全で心血管イベントを抑制する効果が確認されれば、1日に1回よりも少なく投与できる可能性もあります。

今のところは服薬を中止した人にも大きな副作用が認められていないことから、大きな問題にもならないかもしれません。

 

問題はCETP inhibitorは本当に安全か

 

このCETP inhibitorで先行していたPfizerのTracetrapibはものすごい大規模の臨床試験をして、心血管イベントをむしろ増やしてしまうことが明らかとなっています。

血圧をほんのり上げる副作用のせいだ、という方もいるみたいですが、最近の専門家のメジャーな意見はHDLにも善玉と悪玉がいて、CETP inhibitorで増えるのは悪玉の方じゃね?ということ。
AnacetrapibはLillyのEvacetrapibと並んで最強に強いCETP inhibitorと言われています。
もしAnacetrapibでも心血管イベントが増えちゃいました、なんて結果が出たものならどうなるのだろう。

臨床試験で服薬していた患者さんたちは体内に何年も残ることが分かっているわけなので、アメリカであれば裁判沙汰になってもおかしくないですね。