Lillyのpeglisproのプレスリリース!
Lillyの新規基礎インスリン製剤は無事上市できるか?
LillyのHPで新規基礎インスリン製剤 (basal insulin peglispro; BIL) のPhase3データを解析した結果、基礎インスリンの売り上げトップのLantusに血糖降下作用で勝ちましたよ、というプレスリリースがあった。
http://newsroom.lilly.com/releasedetail.cfm?ReleaseID=847123
通常、インスリンの臨床試験はtreat to targetという形式で行われる。
比較対照薬とは同じ血糖になるようにして、そこで低血糖などの副作用を検証する試験だ。
おそらく、BILもtreat to targetのプロトコールでPhase3をはじめ、同様の血糖値を目指して試験をしたはずだ。
しかし理由は不明だが、LantusよりA1Cの低下作用が強く出たのだろう。
しかも体重が減少し、夜間低血糖の頻度も減少したということで、Lantusよりも薬効ではかなり有利な結果だ。
これまでのところ、CVリスクは比較対照薬群と同様のようだ。
だが、不安要素も同時に認められた。
- マイルドながら、統計学的に有意なtriglyceride (TG)の増加とHDL(善玉コレステロール)の低下
- 肝脂質の増加(1試験ではBILで増え、もう1試験ではBILで増えていないが対照薬群で減っており、相対的に増えている)
- ALT(肝障害マーカー)の3倍以上、かつ有意な上昇、シビアな肝障害は報告なし
これら一つ一つはそこまでシビアな副作用でないが、3つも副作用として挙げられること、そして何より、CVリスクを上昇する危険因子としての可能性が考えられることだ。
Novo NordiskのTresibaもUSではCVリスクの危険性を指摘され、大規模なCVアウトカム試験を行っている(日本やヨーロッパでは販売されている)。
FDAの近年の厳しい審査を見ると、BILもCVリスクまで見てね、となる可能性も大きいように思える。
ロイターの予測だとすんなりUSで発売されれば、2018年には$242m(240億円ぐらい)の売り上げとなるようだ。
http://www.reuters.com/article/2014/05/12/us-eli-lilly-study-idUSKBN0DS0WJ20140512
マーケットの反応としてはこの情報によりLillyの株価はflatだったようで、全体としては良いデータ、悪いデータともにあって、まだわからないと言ったところだろうか。
個人的には、このぐらいの副作用の糖尿病治療薬はUSだけでなく、日本、EUの当局はどう判断するか、これも楽しみ。
US, EUは拒絶してCVアウトカム試験をやりなさい、日本はオッケーみたいなこともある気もするのだが。