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経口インスリン薬が2010年代に発売!?

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http://uk.reuters.com/article/2013/10/09/us-novonordisk-oramed-oralinsulin-idUKBRE99804N20131009

インスリンを世界で一番売っている会社であるNovo Nordisk(以下Novo)とイスラエルの小さなバイオベンチャーOramedが経口インスリン薬(oral insulin)を開発中というニュース。

OramedはORMD-0801という開発コードでPhase IIb患者を使ったやや規模の大きめの試験)を行っているらしい。

一方でノNovoはというと、多数のラインナップがPhase I(少数の健常人で体内の動態などを見る試験)に入っている模様。

しかも開発番号LAI287 (NN1436)を見てみると、

 

"A long-acting basal insulin analogue with potential for onceweekly dosing."

週に一回の(経口)インスリンアナログ製剤

 

こんなものまで開発中という、まさに注射剤で培ったノウハウを経口インスリンにも生かしているのだろう。
若干Oramedに遅れているものの、臨床開発のスピードは速いだろうし、インスリンの開発をどこまでも熟知しているので、追いつけるだろう。

インスリンといえば、一般のイメージとしては、かなり糖尿病が悪化してから使うもの、と思うかもしれない。
しかし、今のアメリカ/ヨーロッパの糖尿病学会(ADA/EASD)の共同声明によると、メトホルミンという欧米ではとりあえず使う薬の次には患者に合わせて売り出し中のDPPIV阻害薬やSU剤などとともにインスリンも使っていこう、となっている。

この概念はもちろん日本の専門医にも共有化されている。
もはや悪化しすぎる前に使う薬となっているのだ。

そしてインスリン製剤は注射の針の進歩などもあり、かなり患者の負担は減ってきている。
ただし、どうしてもインスリンを皮下に打つといきなり体全身に回ってしまう。
膵臓のβ細胞から分泌されたインスリンは重要な標的臓器の一つである肝臓を通ってから全身に回る。
こうなることで、インスリンの副作用である低血糖などが起こりにくくなっている。
経口インスリンのメリットはここで、飲むとまず薬は吸収されると肝臓を通って全身にいく、つまり生理的にインスリンが作用するのだ。

経口インスリンは針の痛さのみでなく、副作用も軽減できる、まさに究極の糖尿病治療薬になる可能性を秘めている。


インスリンといえば、NovoとLillyとSanofiの3社が独占している市場。
もしOramedがうまく行ったとするとLillyが買うか、Sanofiが買うか。
それともジャニュビアで一気に市場をとったMerckや買収がうまいPfizerが来るか。
BloombergのニュースによればNovoも買う可能性があるという憶測も。

Novoが買うとインスリン市場はNovoの独占状態か。

そしてNovoのパイプラインをよ~く見てみると、びっくりするものが。
OG217GT (NN9928):Type 2 diabetes, Phase I
"A long-acting oral GLP-1 analogue intended as a tablet treatment."

なんと、これも皮下でないとならないGLP-1アナログまで経口剤にしちゃおうと。
これは当たり前で、ノボのインスリン以外の売り上げの多くをGLP-1アナログのビクトーザで稼いでいるのだ。

タンパク(ペプチド)を経口にする、という技術がどこまで進んでいるのかわかんないが、将来的には抗体医薬なんかまで経口の時代が来るのかな。
まさに21世紀のお薬という感じ。