Never Stop My Curiosity

知的好奇心の赴くままに。

【書評】やるべきことが見えてくる研究者の仕事術(島岡 要)

 

f:id:nsmcuriosity:20131112001800j:plain

 

ビジネス書から学んだエッセンスがギッシリ!

 

本書は実験医学で島岡さんが連載されていた「研究者のためのプロフェッショナル根性論」とオンライン・マテリアルに加筆・修正を加えてまとめた本だ。

 

実験医学では何度か連載を見たことがあったが、本になってまとまっているのを読んでみると、著者の考え方、研究者として目指す像がクリアになる

 

著者は多くのビジネス書を読み、それを研究者であればどのように考え行動するべきか、という視点で自分の中で咀嚼する能力が高い。

そのような観点で書かれた本にはあまり出会ったことがなく、類を見ない本といえるだろう。

 

羊土社から出版ということで少し値が張る(2800円)が、特に若い研究者は人生の指針になるかもしれない良書だ。

 

 

 

研究者として仕事をすべき10の原則

 

その1で書かれている“研究者として仕事をすべき10の原則”に研究者として歩むべき指針が大雑把に書かれており、その後の章に詳細な説明がある。

 

この10の原則は順番も大事であり、今自分がどこにいて、さらにどのように歩むべきか、振り返るべきかを確認することができる。

 

ステップ1:興味を持てる特異分野を発見する(Discovery and interest)

ステップ2:最初は自分で学ぶ(Early self-teaching)

ステップ3:師匠を持つ(Formal education)

ステップ4:現場で恥をかく(Humiliation)

ステップ5:失敗を恐れつつも、果敢に挑戦する(Serious attempts at professional improvement)

ステップ6:自分の世界で一番になり成功体験を得る(The beating local rivals)

ステップ7:研究者として自信をつける(Youthful arrogance)

ステップ8:井の中の蛙であったことに気付き、打ちのめされる(Reality check and crashing back down to Earth)

ステップ9:すべてを知ることはできないことを理解する(Realizing that you’ll never come close to knowing everything)

ステップ10:それでも、自分の新しい見識を常に世に問うていく(謙虚であるが臆病ではない)

 

 

 

著者がビジネス書から得た名言

 

この本の特徴は日本だけでなく、世界で有名な名著から多くの名言が載せられている。

 

日本のビジネスパーソンはよく働きよく勉強し35歳まではどんどん成長して、世界的にみてもトップクラスの能力を身につけていると考えられます。しかし、35歳から50歳までの15年で伸びが急速に鈍くなり、他の国のビジネスパーソンに抜かれてしまうとのこと。企業では35歳以降はほぼ全員が待ちの姿勢になり、大きな失敗をせずに辛抱して10から15年待つという厳しい持久戦を生き抜く「内向き」の能力が試されることになった結果であると考えられます。(「質問する力」 大前研一)

 

自分のキャパシティーを見極める-Dipの途中でquitしたくなったら本当にやめることを検討する前に次の3つのことを確かめようとSethは提唱します。

 

1.パニックになっていないか:冷静に判断することが大切

 

2.アプローチは正しいか:自分の力だけでは突き抜けることのできない壁にぶつかっているのなら、なにかレベレッジの方法はないか考えよう。

 

3.パラメーターを変えてみる:Dipにいる(努力しているのに、全く進歩がない)と感じるのは不適切なパラメーターで自分の進歩を測っているためでは?まったく別のパラメーターを試してみよう。

 

 

 

本書ではSeth Godinの本の内容が多く出てくる。the dipは短い本のようなので、原著を買う予定だ。

 

研究者はブログをはじめるべき

 

著者はブログ「ハーバード大学医学部留学・独立日記」を連載していたが、ブログは研究者にとって論文に並ぶ「名刺戦略」と「自己啓発戦略」になるという。

「名刺戦略」として用いるか、ということは実名を公表するかという問題もあり、万人がこのようには使わないかもしれないが「自己啓発戦略」としては用いることができるだろう。

研究者は最新の論文を読むばかりのインプットに偏りがちだ。

しかしながら、得た「知識」を「知恵」に昇華するにはアウトプットが必須であり、人目にふれて磨かれる「ブログ」は良いツールだろう。

論文や学会発表は日頃の成果を発表する場としては非常に成長させてくれる場であるが、その頻度は低い。ブログを日頃の「知的生産のための装置」として利用することで研究者として成長したい。

 

研究者としての生き方を考えさせられたとともに、はじめたばかりのブログをサボらず続けよう、とする気にしてくれた一冊だった。

 

 

やるべきことが見えてくる研究者の仕事術―プロフェッショナル根性論

やるべきことが見えてくる研究者の仕事術―プロフェッショナル根性論