Never Stop My Curiosity

知的好奇心の赴くままに。

2013年に最も興奮した論文

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betatrophinの発見

2013年度も糖尿病など代謝疾患関連の論文を中心に読んできたが、1番すげ〜!ってなった論文はHarvardのMelton教授のラボからCellに投稿されたbetatrophinの論文。

beta=β細胞、trophin=促進する、の名前にふさわしい、強力に膵β細胞を増殖させる分子だ。

このbetatrophin発見の鍵はマウスにS961というインスリン受容体アンタゴニストを投与して人工的に膵β細胞が増殖するモデルを作ったことだ。

このマウスのマイクロアレイによってbetatrophinが発見された。

肥満などでもβ細胞の増殖は起こるが、強力にβ細胞の増殖を促進させたモデルマウスを使ったのが著者のすごいところだろう。

このbetatrophinは何がすごいかというと、β細胞増殖作用のある代表であるGLP-1なんかと比較してもその作用強度が桁違いなところだ。

複製しているβ細胞が4倍になる!とかの論文は時々あるが、betatrophinを肝臓に発現させたマウスではコントロールの数十倍!


課題はメカニズムとヒトβ細胞でも同じことが起こるか

Cellの論文ではbetatrophinの発見がメインであり機能解析としては組織の発現(肝臓と脂肪に高発現)と分泌タンパクであることぐらい。

betatrophinがどんなメカニズムでβ細胞の増殖を促進せているのか、これからの研究が楽しみだ。


で、薬になるのか

創薬してる身としては、創薬ターゲットになるか、ということになるが、おそらくすでに始められているだろう、と思われる。

EvotecとMelton教授のラボが2011年からCureBetaという名前で共同研究をしているし、このプログラムが2012年にJanssenとライセンスが結ばれている。

Cellでの発表のずいぶん前から研究が進められている可能性が高い。

課題はやっぱり細胞増殖を促進するということで癌化など、正常でない増殖が起こらないか確かめないといけないことだろう。

2014年はβ細胞の生物学がbetatrophinという分子の発見で加速化するんじゃないかな、と思う。

β細胞を増やして糖尿病の完治ができたら。

これは本当に研究者の夢だけど、実現に一歩近づいた大発見でした。